出前授業 - 新潟日報LEADERS倶楽部2021

新潟日報LEADERS倶楽部出前授業

あなたはどこで誰と何をして生きる?
地方をワクワクでアップデートする
ビジョンに向かって

新潟の次世代を担う若者が将来のビジョンを描くヒントになればと、県内出身の先輩が授業を行う、
新潟日報リーダーズ倶楽部「出前授業」。今年度は長岡市の帝京長岡高等学校に地域活性化の仕掛け人・
伊藤綾さんが登壇し、主に大学進学を目指す「特別進学コース」と「文理進学コース」の
1年生30人に授業を行いました。テーマは「私のキャリアのつくりかた」。
その模様を紹介します。

きら星株式会社 代表取締役 伊藤 綾 氏

地方移住をサポートするビジネスの原点  今回の先生は、湯沢町のきら星株式会社で代表取締役を務める伊藤綾さんです。同社は2019年に創業し、これまで湯沢町を中心に65人の新潟移住や就職・転職をサポート。またシェアスペースの運営を通し、町内外の人をつなぐ活動を展開しています。  伊藤さんはまず「高校を卒業した後、長岡や地元に残っていたい人はいる?」と問いかけます。手を挙げた生徒はゼロ。「どこかに出ていくのはいいことだと思います。これから進路を考える参考になれば」と語り始めました。  柏崎市出身の伊藤さんは、地元を離れ南魚沼市の国際情報高校へ進学。ポジティブに変わることができた自身の経験から「人は住む場所が変われば、変われる」という信念を抱きました。大学受験は全戦全勝、慶應義塾大学商学部に進学します。「たくさんのアルバイトに明け暮れました。大学で同じ偏差値・同じ価値観の層と関わっているだけでは分からないことを知れたのは大きい」。

就活失敗からの「キャリアのつくりかた」  就職活動では、都市開発・不動産関連の企業を希望したものの、80社を受けて全敗。いい大学を出れば安泰というわけではないと身をもって知ります。IT企業に就職し、営業として働くことに。「就活失敗は途中経過。入社時から3年で辞めることを決め、道を切り開く努力を続けました」。圧倒的な結果を出した後、念願のまちづくりの仕事に転職。ショッピングモール開発企業で約7年勤務します。「ショッピングモールは雇用を生み、街を活性化させます。一方で不採算店は閉店せざるを得ないなど、大資本によるまちづくりのジレンマがありました」。小回りの効くまちづくりに挑戦しようと、きら星を起業することを決意します。  きら星は「地方で暮らす人を増やし消滅可能性都市をなくす」ことをミッションとしています。そのためには「収入/やりがいのある仕事」「働く場を面白くする」という課題がありました。伊藤さんは地方での暮らしをPRすると同時にシェアスペースを立ち上げます。「シェアスペースはこの10月で1周年。違う業種の人が同じ場所で働き、新しいプロジェクトが生まれる。『きら星に行くと面白いね』とさまざまな人が集まる魅力的な場所です。私たちの目標は『地方をワクワクでアップデートする』ことなんです」と、前半の授業を終えました。

生徒たちの地域の課題解決ワークショップ  後半はワークショップです。机に「ソーシャルコンセプト」と書かれた紙が配られました。そこには<地域の課題:現状と課題の原因>、<ビジョン:課題が解決された世界は?>、<どうやって解決するか>を記入する欄があります。伊藤さんが日頃地域課題解決のために使っている手法をシートにしたものです。  まずは課題を考えます。「今感じている地域の課題は何ですか?身の回りの困っていることでもいいですよ」。人口減少、にぎわいの衰退、遊ぶ店の少なさなど、それぞれが考える課題が記されます。  次にビジョン。その課題が解決されたらどうなる?グループで話し合いながら空欄を埋めていきます。そしてその課題をどう解決するか。伊藤さんは「例えば課題が『アルビレックスBBが盛り上がっていない』だとしたら『アルビBBの勝利を喜ぶ街』がビジョンになります。そのためには『試合をいつやるか誰にでも分かるようにする、テレビ中継する』などの方法が考えられます。ワクワクする未来を想像して書いてみて」とアドバイスしながら見て回ります。

自分の未来は自分でつくろう  生徒が考えた課題やコンセプトを発表しました。「バスでSuica(スイカ)が使えないのが課題で、使えるようになるのがビジョン。Suicaを導入するにはお金がかかるので、バスに乗る人を増やさなければ。自家用車だけ有料の道路をつくればみんながバスに乗り、車を使う人が減れば交通事故も減ります」。これに対して伊藤さんは「バスの活用で渋滞が減り、環境に優しい安心安全な街になる。いい提案でした」と評価しました。  別の生徒は「高校を卒業した人が都会に出てしまう。経済が発展して若い人が働く街がビジョンです。解決策としては、IT企業の経済特区をつくって、若い人が働ける会社を増やすことだと思います」と発表。伊藤さんは「長岡市は今『長岡リジュベネーション(長岡若返り戦略)』を進めています。IT特区、いいですね。この意見は長岡市に聞かせたい」と話しました。  「新潟に帰ってきた頃はよく『なんで東京から戻ってきたの』『うちの町なんて何もないじゃない』と言われました。まずそこにいる一人一人がワクワクすればもっと地方は面白くなります」と伊藤さん。  最後に映し出されたスライドに書かれていたのは「あなたなら何を成し遂げますか」。「私の人生はいい時も悪い時も、失敗もありました。それでもぶれずにやれたのは目標があったからです。目標があれば多少の失敗なんて平気。自分が人生で何を成し遂げたいか、今からぼんやりとでも考えてみて」と結びました。

授業の感想

  • 羽生先生の勝負観や決断に至るプロセスを聞くことができたことが一番の収穫でした大切な事は、「人は場所が変われば変われる」「どんな事にもチャレンジする精神」「自分の未来の為の惜しみない努力」「1から始めるのではなく0を1にする」事。自分のあこがれの大学の先輩として、とても参考になるところがたくさんあった。
  • とてもためになる時間だった。地域の課題について再確認できたり、皆がどのような未来像を想像しているのかを知れたりして良かった。やはり、自分でつくった仕事は楽しいんだと思った。
  • 人とのつながりが充実した未来につながるということが分かった。有名な学校よりも、自分の未来の実現に向けて進路選択をするのが大事だと思った。今日の気付きを忘れずに過ごしていきたい。

プロフィール

伊藤 綾(いとう・あや)

1985年生まれ、柏崎市出身。国際情報高等学校から、慶應義塾大学に進学。卒業後、都内のシステムコンサル会社に就職。3年間働いた後、大学時代から興味のあったまちづくりの仕事をするためにイオンモール株式会社に転職し、全国各地の店舗開業・リニューアルなどに携わった。その後、結婚や出産を経て、人口が集中し過ぎている首都圏から地方への移住促進事業を自らの手で行うことを決意。2019年、移住希望者に湯沢・魚沼地域の仕事や暮らしを紹介し、移住のコーディネートを行う「きら星株式会社」を湯沢町で起業した。プライベートでは2児の母として、子育てにも奮闘している。