10周年記念講演会 - 新潟日報LEADERS倶楽部2021

新潟日報LEADERS倶楽部10周年記念講演会

2012年にスタートした新潟日報リーダーズ倶楽部は、
元気あふれる新潟の未来の実現、次世代リーダー育成のために
さまざまな取り組みを行っています。発足から10年目の節目を迎えたことを
記念し、将棋棋士の羽生善治氏を迎えた講演会を開催。
新潟日報メディアシップでは協賛企業の関係者ら80人が参加、
ライブ配信では約350人が視聴しました。

講演

将棋棋士 羽生 善治氏

今日のテーマは「決断力を磨く」。将棋ではまず「直感」を使います。1場面で平均80通りほどの可能性の中から、過去の経験と照らし合わせ「ここが中心・要点・急所」というものを瞬間的に二つか三つ選びます。これまでの経験の集大成が直感です。次に未来を予測する「読み」を行いますが、ここで問題に直面します。10手先を考えようとすると、直感で選んだ三つの手の10乗、つまり約6万通りになってしまいます。そこで使うのが「大局観」。過去から現在までのプロセスを総括し、この先の方向性や戦略を抽象的に考えることです。大局観を使い方向性を決めることで、可能性を絞り込むことができます。棋士は局面により直感、読み、大局観を使いながら考えています。

力を十二分に発揮できるのはリラックスして楽しんでいる時。しかし緊張やプレッシャーを感じるのは、あと一歩で成功できるかも、というブレークスルーのきっかけになる時でもあります。良い緊張は身が引き締まり、悪い緊張は身がこわばると言いますが、決断力を磨くには、程よい緊張感を目指すのがいいのではないでしょうか。

ミスはしないほうがいいものですが、ミスのない対局はほとんどありません。大切なのはミスを重ねないこと。小休止をして心を落ち着かせます。そして反省と検証を後回しにすることも大事です。まずは目の前の局面を挽回し、傷を深くしないことに集中するようにしています。

AI(人工知能)は将棋のみならずホットな話題です。近年のAIは膨大な数の「自己対戦」を行い、直感や大局観に近い発想が出せるようになりました。ではAIは人間に置き換わってしまうのかというと、そうではありません。人間には時系列を考慮して判断することや、未知なるものに対して学習と推論を同時に行えるという能力があります。将棋棋士もデータや対戦の量では絶対にAIにかないません。質の高い、見ている人が喜ぶ将棋が指せるか、という根本が問われているのだと思っています。

参加者の声

羽生先生の勝負観や決断に至るプロセスを聞くことができたことが一番の収穫でした。ミスした後は寝る、という呆気ない対処法には思わず笑いましたが、結局人間はそういったものだな、と真理を学んだ気がしました。(60代) 「直感、読み、大局観」「モチベーション」「将棋の歴史」「ミスへの対処」「AI時代の対応」など、多岐にわたり、とても参考になる話を聞かせていただき、とてもよかったです。 (50代)
対局への姿勢やリセットの仕方、将棋の歴史やAIのお話まで多様な内容で大変興味深く拝聴いたしました。今後、羽生九段が新潟で対局される機会があれば、子どもと応援に参りたいと思います。 (40代) 決断力を磨くという演題どおりの無駄のないお話でした。超高齢者となっても日々どの道を選ぶか戸惑いの多い事ばかり起きますが、将棋の世界ばかりでなく、大変役に立つお話しでした。 (70歳以上)

プロフィール

将棋棋士 羽生 善治(はぶ よしはる)

1970年、埼玉県所沢市出身。6歳から将棋を始める。1982年、6級で二上達也九段に入門。1985年、史上3人目の中学生棋士としてデビュー。1989年、19歳で初タイトル竜王を獲得。1996年には史上初の7冠(7大タイトル独占)を達成。
現在竜王、名人、王位、王座、棋王、王将、棋聖の七つの永世資格を持つ。